○鹿島地方事務組合消防本部火災調査規程
平成25年11月29日
消本訓令第1号
鹿島地方事務組合消防本部火災調査規程(平成21年消防本部訓令第41号)の全部を改正する。
第1章 総則
(趣旨)
第1条 この訓令は,消防法(昭和23年法律第186号。以下「法」という。)第7章の規定に基づく火災調査(以下「調査」という。)について,必要な事項を定めるものとする。
(1) 火災 人の意図に反して発生し若しくは拡大し,又は放火により発生して消火の必要のある燃焼現象であって,これを消火するために消火施設又はこれと同程度の効果のあるものの利用を必要とするもの,又は人の意図に反して発生し若しくは拡大した爆発現象をいう。
(2) 爆発現象 化学的変化による爆発の一つの形態であり,急速に進行する化学反応によって多量のガスと熱を発生し,爆鳴,火炎及び破壊作用を伴う現象をいう。
(3) 調査 火災現場から消防行政施策の資料を収集するための質問,実況見分,鑑識,鑑定及び実験等の一連の行動をいう。
(4) 鑑識 火災の原因の判定を補助するため,専門的な知識,技術,経験及び機器を活用し,総合的な見地から具体的な事実関係を明らかにすることをいう。
(5) 鑑定 火災にかかわる物件の形状,構造,材質,成分,性質及びこれらに関連する現象について,科学的手法により,必要な試験及び実験を行い,その結果を基に火災原因判定のための資料を得ることをいう。
(6) 調査員 調査に従事する消防職員をいう。
(7) 関係者等 法第2条第4項に規定する関係者並びに火災の発見者,通報者,初期消火者及びその他調査の参考人をいう。
(8) 建物 土地に定着する工作物のうち屋根及び柱若しくは壁を有するもの,観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設けた事務所,店舗,興行場,倉庫その他これらに類する施設をいう。
(9) 建物の収容物 原則として柱,壁等の区画の中心線で囲まれた部分に収容されている物のほか,バルコニー,ベランダ等に置かれたものをいう。
(10) 森林 森林法(昭和26年法律第249号)第2条第1項に規定する森林をいう。
(11) 原野 自然に雑草又はかん木類が育成している土地で,人が利用しないものをいう。
(12) 牧野 主として家畜の放牧又は家畜の飼料若しくは敷料の採取の目的に供される土地(耕地の目的に供される土地を除く。)をいう。
(13) 車両 原動機を用いて陸上を移動することを目的として製造された用具であって自動車,汽車,電車及び原動機付自転車をいう。
(14) 被けん引車 車両によって牽引される目的で造られた車及び車両によってけん引されているリヤカーその他の軽車両をいう。
(15) 船舶 独行機能を有する帆船,汽船及び端舟並びに独行機能を有しない住居船,倉庫船,はしけ等をいう。
(16) 航空機 人が乗って航空の用に供することができる飛行機,回転翼航空機,滑空機,飛行船等の機器をいう。
(火災の種別)
第3条 火災の種別は,次の各号に区分するものとする。
(1) 建物火災 建物又はその収容物が焼損した火災をいう。
(2) 林野火災 森林,原野又は牧野が焼損した火災をいう。
(3) 車両火災 車両,被けん引車又はそれらの積載物が焼損した火災をいう。
(4) 船舶火災 船舶又はその積載物が焼損した火災をいう。
(5) 航空機火災 航空機又はその積載物が焼損した火災をいう。
(6) その他火災 前各号に掲げる火災以外の火災をいう。
2 前項各号の火災が複合するときの火災の種別は,焼き損害額の大なる種別とする。ただし,焼き損害額の大なるものによることが社会通念上適当でないと認められるときは,この限りでない。
(調査の区分及び範囲)
第4条 調査は,原因調査及び損害調査に区分し,その範囲は次に掲げるとおりとする。
(1) 原因調査の範囲は,次のとおりとする。
ア 出火原因 火災発生経過及び出火箇所
イ 発見,通報及び初期消火状況 発見の動機,通報及び初期消火の一連の行動経過
ウ 延焼状況 建物火災の延焼経路及び延焼拡大要因等
エ 避難状況 避難経路及び避難上の支障要因等
オ 消防用設備等又は特殊消防用設備等の状況 消防用設備等又は特殊消防用設備等の使用又は作動等の状況
カ 住宅防災対策の状況 住宅用防災機器の使用又は作動等の状況
(2) 損害調査の範囲は,次のとおりとする。
ア 人的被害の状況 火災による死傷者,り災世帯,り災人員等の人的な被害の状況及びその発生状況
イ 物的被害の状況 火災による焼き,消火,爆発等による物的な損害の状況
ウ 損害額の評価等 火災により受けた物的な損害の評価及び火災保険等の加入状況
第2章 調査体制
(調査責任)
第5条 消防署長(以下「署長」という。)は,鹿島地方事務組合消防本部及び消防署の設置に関する条例(平成21年鹿島地方事務組合条例第28号)第4条に規定する管轄区域内の調査の責任を有する。
2 1件の火災のうち延焼範囲が2以上の区域にまたがった火災については,発生区域の署長が調査を行うものとし,延焼範囲を管轄する署長は,これに協力するものとする。
(調査体制の確立と資質の向上)
第6条 消防長又は署長は,常に人員及び機材を整備し,調査業務執行体制の万全を図るとともに,調査員に対して教養の徹底,研究会の開催及び自己啓発の助長等により,その資質の向上を図るよう努めなければならない。
(調査員の指定)
第7条 消防長は,消防本部警防課に所属する職員から調査員(以下「本部調査員」という。)を指定するものとする。
2 署長は,消防署に所属する職員から調査員(以下「署調査員」という。)を指定するものとする。
3 消防長及び署長は,法第31条,第32条第1項,第33条,第34条第1項及び第35条の2第1項に規定する調査,質問及び立ち入りを調査員に行わせることができるものとする。
(責務)
第8条 調査員は,調査を行うために必要な科学的知識,技術を修得し,調査業務の推進に努めなければならない。
(本部調査員の派遣)
第9条 署長は,調査上特に必要と認めるときは,消防長に対し本部調査員の派遣を要請することができる。
2 消防長は,前項の要請があった場合は,火災の状況等を勘案し本部調査員を派遣するものとする。
3 前2項の規定にかかわらず,消防長は,特に必要があると認めるときは,本部調査員を派遣することができる。
(特別調査班の編成)
第10条 危険物製造所等及び高圧ガス施設において大規模火災が発生した場合で,消防長が必要と認める調査については,特別班をもって実施するものとする。
2 前項の規定による調査の指揮は,警防課長がとるものとする。
第3章 調査業務処理の基本
(調査の原則)
第11条 調査は,物的証拠を主体とし,科学的方法による合理的な事実の解明でなければならない。
(関係者等への対応)
第12条 調査にあたっては,関係者等に対して公平,公正を基本とし,穏健妥当な方法により協力を得るように努めなければならない。
(立入の原則)
第13条 調査員は,関係者の承諾を得て,現場その他関係のある場所に立ち入ることを原則とする。
2 調査のため関係のある場所に立ち入るときは,鹿島地方事務組合消防本部消防吏員証取扱規程(平成21年鹿島地方事務組合消防本部訓令第9号)に規定する吏員証を携帯し,関係のある者の請求があるときは,これを示さなければならない。
(少年等に関する特則)
第14条 18歳未満の少年(以下「少年」という。)に関する調査を行うにあたっては,少年の将来を考慮し,温情と理解をもってあたらなければならない。
2 少年は,実況見分の立会人としてはならない。
3 少年に対して質問するときは,立会人をおいて行わなければならない。
4 調査員は,前2項の規定にかかわらず調査を行うため特に必要があると認めるとき,又は年齢,心情その他諸般の事情を考慮して支障ないと認めるときは,一般の例により行うことができる。
(資料,情報の収集)
第15条 調査員は,関係者等について調査上必要な情報を収集し,資料を確保しなければならない。
(調査記録)
第16条 調査員は,調査の結果やその他参考となる事項を記録しておかなければならない。
第4章 調査業務の執行
第1節 出火出動時の調査等
(調査の着手等)
第17条 調査員は,火災の覚知とともに調査活動を開始しなければならない。
(出火出動時の見分状況把握)
第18条 火災に出動した消防隊員は,消防活動等を通じて火災の状況の見分に努めなければならない。
2 消防隊員は,出動途上及び現場において関係者等への質問及び現場の状況から,火気管理,発見,通報,初期消火,避難,死傷者,消防対象物のり災状況並びに消防用設備等又は特殊消防用設備等の使用,作動状況等の火災概要を把握し,事後の円滑な現場調査に努めなければならない。
3 火災に出動した消防隊員は,把握した事項について調査員より報告を求められたときは,必要に応じて出火出動時における見分調査書(様式第1号)を作成するものとする。
(消防活動中の現場保存)
第19条 消防隊員は,消防活動をするにあたって物件を移動し,又は破壊するときは最小限にとどめ,調査のため必要な措置を講じるとともに現場保存に最大の配慮をしなければならない。
2 消防隊員は,消防活動のためやむを得ず出火場所付近の物件を移動し,又は破壊しようとするときは,原状がわかるよう必要な措置を講じなければならない。
(消防警戒区域の設定)
第20条 消防長又は署長は,現場調査のため法第28条に基づく消防警戒区域を設定し,現場保存に努めなければならない。
2 前項の規定による消防警戒区域の設定は,所轄警察署と連携を密にして行うものとする。
3 消防警戒区域内に関係者又は電気,ガス,水道業の工事人その他を立ち入らせる場合は,消防職員を立ち会わせるものとする。
第2節 原因調査
(調査の指揮)
第21条 消防長又は署長は,調査の万全を期すため指揮者を定めなければならない。
2 指揮者の責務は,次に掲げるとおりとする。
(1) 現場の見分,写真撮影,図面作成等の各担当者の指定に関すること。
(2) 捜査機関,その他の関係機関との調整に関すること。
(3) 調査書類の作成に関すること。
(現場立会人)
第22条 現場の調査は,関係者を現場立会人として実施しなければならない。ただし,特別な事情により関係者が不在でやむを得ない場合は,警察官又は関係者の近親者等を立会人とすることができる。
2 現場立会人は,見分しようとする場所,物件に直接関係する者を優先しなければならない。
3 火災現場において調査のため必要がある場合は,関係者の了解を得て当該火災に関係する物件の製造者等を立会人とすることができる。
4 現場の立会を求めた場合は,立会人の安全管理,健康管理及び言動等に細心の配慮をしなければならない。
(実況見分)
第23条 調査員は,原因決定資料の発見入手及び被害状況の把握に努め,すべての火災に対しその実況を詳細に見分しなければならない。
2 現場の発掘は,現場見分状況,出火出動時の見分状況及び関係者等の申述を加え総合的に判断して,出火範囲として限定した区域を周囲から出火箇所付近へ順次実施するものとする。
3 発掘に際しては,立会人の申述に基づく物品配置等に留意し,関係物件の原状確保に細心の配慮をしなければならない。
4 発掘は,常に復元的観点にたって行わなければならない。
5 調査員は,実況見分を行ったときは,実況(鑑識)見分調査書(様式第2号)を作成するものとする。
6 実況(鑑識)見分調査書には,その内容を明らかにするため,図面及び写真貼付紙(様式第3号)を添付しなければならない。
(質問)
第24条 調査員は,り災物件の出火前の状況,火気及び可燃物の使用管理の状況,火災の推移,居住者等の行動等について,関係者等から任意に申述を得るように努めなければならない。
2 質問を行うにあたっては,場所,時期などを考慮するとともに,自己が期待し,又は希望する申述内容を相手方に暗示するなどの方法により誘導してはならない。
4 質問調査書を作成した調査員は,前項の質問調査書を被質問者に読み聞かせ,又は閲覧させるものとする。
(原因の決定)
第25条 火災の原因は,実況(鑑識)見分調査書,出火出動時における見分調査書,質問調査書及びその他関係資料を総合的に検討し,科学的かつ合理的に考察して決定しなければならない。
第3節 損害調査
(り災物件の調査)
第26条 調査員は,火災により焼損,破損,水損及び汚損した物等を調査し,正確な損害の把握に努めなければならない。
2 関係者から提出されたり災申告書は,これを審査して受理するものとする。ただし,審査の結果,調査員が現場において調査した消防対象物のり災状況と当該り災申告内容が著しく異なるときには,関係者に対し質問等によりその矛盾を明らかにし,訂正を求めた後,受理するものとする。
(損害額の決定)
第28条 調査員は,調査により把握したり災状況及びり災申告書を総合的に検討し,損害額を決定しなければならない。
(死傷者の調査)
第29条 調査員は,火災に起因して死傷者が発生したときはその状況を調査し,死傷者の調査書(様式第11号)を作成するものとする。
第4節 資料提出等
(資料の任意提出)
第30条 消防長又は署長は,調査のため必要と認めるときは,関係者に対し焼損物件等の資料の提出を求めることができる。
3 調査が終了したときは,努めて資料を関係者に返却するものとする。
(法第32条に係る資料提出命令)
第31条 消防長又は署長は,火災の原因である疑いがあると認められる製品の製造事業者又は輸入事業者に資料の提出又は必要事項の報告を求めることができる。この場合においては,必要に応じて資料提出要請書(様式第13号)を交付するものとする。
2 消防長又は署長は,製造事業者又は輸入事業者が前項の規定による資料の提出又は必要事項の報告に応じないときは,当該製品の情報について総務省消防庁へ照会を行うものとする。
(法第34条に係る資料提出命令)
第32条 消防長又は署長は,関係者が第30条の規定による資料の提出に応じない場合は,関係者に対し資料提出命令書により資料の提出を命ずるものとする。
2 前項の規定により資料保管書を交付した資料は,調査が終了するまで保管しなければならない。
(資料の返還)
第34条 消防長又は署長は,前条により保管していた資料を提出者に返還するときは,資料保管書を提出させるものとする。
(鑑定の依頼)
第35条 消防長又は署長は,調査のため特に必要と認めるときは,学識経験者又は関係官公署等に対し,資料の鑑定を依頼することができるものとする。
(官公署への照会)
第36条 消防長又は署長は,官公署に対し調査に関する事項を照会するときは,火災調査関係事項照会書(様式第17号)により行うものとする。
第5章 調査書類の作成及び報告
(1) 火災調査書(様式第19号)
(2) 火災原因判定書
(3) 出火出動時における見分調査書
(4) 実況(鑑識)見分調査書
(5) 質問調査書
(6) 火災原因の立証のために必要な資料
ア 鑑識,実験結果に関する資料
イ 火災調査関係事項照会書
ウ その他,火災原因判定書作成上必要な書類
(7) 損害調査にかかわる調書
ア 損害調査書
イ 建物損害算出書
ウ 収容物損害算出書
エ り災申告書
オ 死傷者の調査書
カ 防火管理等調査書(様式第20号)
キ 危険物施設等調査書(様式第21号)
ク その他,損害調査書作成上必要な書類
(8) その他必要な書類
2 前項の規定にかかわらず,火災の種別及び規模により必要がないと認めるときは調査書類の一部を省略することができる。
(調査書類の作成基準)
第38条 調査書類は,火災の種別及び規模に応じ,次に掲げる区分により処理するものとする。
(1) 1号処理
ア 出火原因の判定が困難な火災
イ 製造物の欠陥(疑いを含む。)により出火した火災
ウ その他,消防長が必要と認める火災
(2) 2号処理
1号処理以外の火災で,損害額が千円以上又は死者が発生したもの
(3) 3号処理
1号及び2号処理以外の火災
2 調査員は,前項の区分に応じて次の書類を作成しなければならない。
(1) 1号処理
火災調査書,火災原因判定書(様式第5号),実況(鑑識)見分調査書,質問調査書
(2) 2号処理
火災調査書,火災原因判定書(様式第6号),実況(鑑識)見分調査書,質問調査書
(3) 3号処理
火災調査書,火災原因判定書(様式第6号)
(調査書類の報告)
第39条 警防課長及び署長は,第37条の規定により作成した火災調査報告書を火災覚知の日から起算して60日以内に消防長へ報告するものとする。ただし,鑑識,実験等の調査又は鑑定に伴う外部委託,その他特別な事由による場合は,この限りでない。
2 署長は,本部調査員が担当する火災であって,本部調査員が署調査員に作成を依頼した調査書類については,火災調査報告書に作成した調査書類を添付し,火災覚知の日から起算して30日以内に消防長へ報告するものとする。
第40条 削除
(り災概況報告)
第41条 署長は,火災により損害又は死傷者が発生した場合はり災概況報告書(様式第23号)を作成し,火災覚知の日から起算して7日以内に消防長へ報告するものとする。
(調査書類の保存)
第42条 署長は,第37条の規定により整理編冊した調査書類を保存しなければならない。
第6章 照会等の対応
(照会等の対応)
第43条 消防長は,裁判所又は捜査機関等から調査結果の内容について照会があった場合は,その抄本を送付し,又は内容について回答することができる。
(照会等対応の原則)
第44条 前条の照会等の対応は,個人情報及び犯罪に関する情報等の保護に留意し,別に定めるところにより対応するものとする。
(証人,参考人としての出頭)
第45条 職員は,自己の担当した調査に関して捜査機関から参考人として出頭を要請され,又は裁判所から証人等として呼び出し,若しくは召喚を受けた場合は,消防長にその事案概要を報告しなければならない。
2 前項により出頭した結果についても同様とする。
第7章 委任
第46条 この訓令の施行について必要な事項は,消防長が別に定める。
付則
(施行期日)
1 この訓令は,平成26年1月1日から施行する。
(経過措置)
2 この訓令は,施行の日以後に発生した火災について適用し,同日前に発生した火災については,これらの規定にかかわらず,なお従前の例とする。
付則(平成28年消本訓令第3号)
(施行期日)
この訓令は,公布の日から施行し,平成28年4月1日から適用する。
付則(平成30年消本訓令第15号)
この訓令は,平成30年11月21日から施行する。
付則(令和3年消本訓令第2号)
この訓令は,令和3年4月1日より施行する。
付則(令和4年消本訓令第4号)
この訓令は,令和5年1月1日から施行する。
様式第22号 削除