製造所等において行われる変更工事に係る取扱いについて
消防 危 第4 9号
平成14年3月29日
製造所等において行われる変更工事に係る取扱いについて
消防庁危険物保安室長
標記のことについては、「製造所等において行われる工事に係る変更許可等の取扱いについて」(昭和61年12月26日付け消防危第121号。以下「121号通知」という。)による運用をお願いしているところです。
今般、「軽微な変更工事」とは、変更許可を要しない変更工事であることを明確にするとともに、121号通知における「資料の提出を要しない軽微な変更工事」及び「資料の提出を要する軽微な変更工事」の趣旨を明確にしました。すなわち、「資料の提出を要しない軽微な変更工事」とは、軽微な変更工事のうち、資料等による確認を要さないものであり、また、「資料の提出を要する軽微な変更工事」は、資料等による確認を要する変更工事(確認の結果、軽微な変更工事として許可を要しない場合もあるもの)であるとしました。
また、121号通知別添について、変更工事の種類を細分化するとともに、軽微な変更として許可を要さないものの範囲の見直しを行いました。
これらを踏まえ、121号通知の見直しを行い、下記のとおり製造所等において行われる変更工事の取扱いについて定めました。これに伴い121号通知は廃止します。
つきましては、貴管内の市町村に対してもこの旨周知されるようお願いします。
記
1 基本的事項
(1)製造所等において、維持管理を目的とする工事が行われる結果、製造所等に変更が生じる場合において、消防法(昭和23年法律第186号。以下「法」という。)第11条第1項本文後段の規定による許可を要しないものとして取り扱う範囲については明文の規定はないが、同条同項及び同条第2項の解釈上、法第10条第4項の位置、構造及び設備の技術上の基準(以下単に「基準」という。)の内容と関係がない工事については、変更の許可を要しないものである。したがって、製造所等を構成する部分のうち危険物以外の物質を貯蔵し、又は取り扱う部分(以下「非対象設備」という。)については、位置の基準並びに消火設備及び警報設備の基準以外の基準の適用はないので、非対象設備のみの変更が行われる場合において位置又は消火設備若しくは警報設備に変更を生じないものについては、変更の許可を要しないものであるが、危険物を貯蔵し、若しくは取り扱う部分(以下「対象設備」という。)又は対象設備と非対象設備の両方の部分に関して行われる工事については、位置、構造及び設備の基準との関連により変更許可を要するかどうかについて判断する必要が生ずることになるものである。
(2)ただ、製造所等を構成する機器は相互に密接に関連しつつ一体として施設を構成しており、また、変更の内容もさまざまであることから、変更が行われる結果基準の内容と関係が生じるかどうかは、すべて事前に明白であるわけではなく、他方、形式的には基準の内容と関係が生じる場合においても、その内容が軽微であるために保安上の問題が生じないものまで変更許可を要することとすることは、いたずらに申請者に負担をかけるだけで、事務の効率的な運用の観点からも適当ではない。したがって、変更工事については、その形態に応じ資料等による確認を実施し、若しくは、当該変更工事が、基準の内容と関係が生じないものであると判断できる場合又は形式的には基準の内容と関係が生じるが保安上の問題を生じさせないものであると判断できる場合又は資料の提出等をさせずに、当該変更工事を「軽微な変更工事」として変更許可を要しないものとすることができるものとする。
2 具体的運用に関する事項
(1)工事の内容が極めて軽微であることから、基準の内容と関係が生じないこと、又は、保安上の問題を生じさせないことが明白であるものについては、資料等による確認を要することなく、「軽微な変更工事」として変更許可を要しないこととすることができるものとし、この場合においては、事後における資料等の提出も要しないものとする。
(2)基準の内容と関係が生じるかどうかについて確認する必要があるものについては、「確認を要する変更工事」として事前に工事の内容を資料等により確認をすることとし、この場合において、工事の内容が、基準の内容と関係が生じないものであること又は保安上の問題を生じさせないものであることが明らかになった場合は、「軽微な変更工事」として変更許可の手続を要しないこととすることができるものとする。
変更工事が、保安上の問題を生じさせないものであると判断するための要件をあらかじめ一律に定めることは困難であるが、一般的には、少なくとも次の要件を満たす必要がある。
ア 変更工事に伴い、製造所等の許可に係る危険物の品名、数量又は指定数量の倍数の変更がないこと。
イ 変更工事に伴い、位置に係る技術上の基準に変更がないこと。
ウ 変更工事に伴い、建築物又は工作物の技術上の基準のうち、防火上又は強度上の理由から必要とされる基準に変更がないこと。
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エ 変更工事に伴い、通常の使用状態において、可燃性蒸気又は可燃性微粉の滞留するおそれのある範囲の変更がないこと。
なお、この場合において資料等による確認を実施する範囲は、工事の内容を前記の観点から判断する上で必要な最小限のものとするよう配慮されたい。
(3)工事の形態により、変更許可を要する工事と(2)の「確認を要する変更工事」とが同時に行われる場合には、変更許可申請時に資料等による確認を実施して差し支えないものである。この場合、(2)の工事が軽微な変更工事となった場合には、当該工事にかかる部分については、変更許可に係る完成検査は要しないものである。
(4)製造所等において行われる変更工事に係る判断のフローは図1に示すとおりである。また、「軽微な変更工事」及び「確認を要する変更工事」に関する具体的な判断資料については、別添のとおりであるが、別添に掲げられていない工事であっても、変更の程度がこれらの例の何れかと類似又は同等であると認められるものについては、2(1)アからエの判断基準を参考に、同じ取扱いをして差し支えないものである。
3 火花を発する器具の使用に係る手続き
変更工事に伴い溶接溶断等火花を発する器具を使用する場合は、製造所等に係る火災等の災害防止のため、法第16条の5に規定する資料の提出に基づき、公示性のある市町村長等の規則等によって、その使用場所及び周囲の状況等に係る資料の提出を求めることが可能であること。
ただし、許可申請、法第11条第5項ただし書きの規定による申請又は市町村条例に定める届出等において、溶接溶断等火花を発する器具の使用場所等が確認できる場合は、申請者に負担とならないように、同様の届出を重複して求めることのないようにすること。
4 その他
予防規程を定めなければならない製造所等において、「軽微な変更工事」を実施した場合は、危険物の規制に関する規則第60条の2第1項第13号の規定に従い、製造所等の位置、構造及び設備を明示した書類又は図面に、実施日及び内容等を記録しておくこと。
なお、予防規程を定めなければならない製造所等から除かれるものにあっても、「軽微な変更工事」を実施した場合は、同様に明らかにしておくことが望ましいものであること。
図1 製造所等において行われる変更工事に係る判断フロー
別添
第1 定義
1 変更工事の区分
変更工事は、「取替」、「補修」、「撤去」、「移設」及び「改造」に区分する。
2 取替等の定義
(1)取替
製造所等を構成する機器・装置等を既設のものと同等の種類、機能・性能等を有するものに交換し、又は造り直すことをいい、「改造」に該当するものを除く。
(2)補修
製造所等を構成する機器・装置等の破損箇所等の部分を修復し、現状に復することをいい、「改造」に該当するものを除く。
(3)撤去
製造所等を構成する機器・装置等の全部又は一部を取り外し、当該施設外に搬出することをいう。
(4)増設
製造所等に、新たに機器・装置等の設備を設置することをいう。
(5)移設
製造所等を構成する機器・装置等の設置位置を変えることをいう。
(6)改造
現に存する製造所等を構成する機器・装置等の全部又は一部を交換、造り直し等を行い当該機器・装置等の構成、機能・性能を変えることをいう。
第2 具体的な例示